太陽光パネルの最適な設置角度・方位は? | FIPも考慮した最適設置条件を検証、日射量データベース閲覧システムの使い方も解説

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皆さん、こんにちは。

今回の記事では、収益を最大化させるための太陽光パネルの最適な設置角度・方位について検証し、ご説明をしたいと思います。FIT制度を利用して太陽光パネルを設置する場合、売電の買取価格は時間帯によらず一定であるため、出来る限り多く発電することが大事です。一方、新しいFIP制度では買取価格が電力卸売市場(JEPX)と連動するため、出来る限り電気が高い時間帯に売電することが大事です。設置角度や方位を変えることで、FIP制度での収益を最適化できるか検証してみます。なお、FITとFIPについては、以前の記事をご覧ください

検証方法について

今回の検証を行うためには、先ず「設置場所・角度・方位毎の発電量」が必要です。買取価格が固定であるFITの場合は、この発電量の合計値に買取価格を掛ければ収益がでます。一方、FIPの場合は時間帯により買取価格が異なるため、「時間帯別の発電量×時間帯別の買取価格」の合計値を求めなければいけません。

設置場所・角度・方位毎の発電量

「設置場所・角度・方位毎の発電量」ですが、こちらはNEDOで公開している日射量データベース閲覧システム(1)で日射量のデータを取得し、そこから発電量を計算するのが良いです。このシステムはWEB版もありますが、私が見た限りでは時間帯別の発電量データを取得するにはダウンロードが必要になります。

先ず、NEDOのホームページから日射量データベース閲覧システムMETPV-11データファイルMONSOLA-11データファイルの3つのファイルをダウンロードし、日射量データベース閲覧システムをご自分のPCにインストールしてください。そして、日射量データベース閲覧システムを起動し右図の通り①データフォルダの設定でダウンロードした「METPV-11データファイル」「MONSOLA-11データファイル」の場所を指定し、「年間時別日射量データベース」をクリックしてください。

すると、日本地図が出てきますので、確認したい地域を選んでください。「エリア」→「地点」の順で選び、その後画面下部の「この地点のグラフを表示」をクリックしてください。

右図の通り①表示データ指定で「斜面日射量データ」、②表示画素で「平均年」、③日射量データの表示種類で「傾斜角指定」を調べたい角度に設定してください。その後、画面左下の④「一年分のデータを保存」をクリックし、⑤斜面日射量データウィンドウで保存形式を選択して「OK」をクリックしてください(私は、「5度単位」「csv形式」を使っています)。保存したデータに、指定場所の時間帯別・設置方位別の日射量が表示されています。データの詳細については、NEDOで公開するマニュアルをご確認ください。

最後に、日射量のデータから発電量を計算します。本来は、外気温度(外気温が高すぎるとパネルの発電効率が低下します)やパワコン(パワーコンディショナー:太陽の直流電力を交流に変換する機械)のロスを考慮しなくてはいけませんが、ここでは簡易比較を行うだけなので、日射量データにパネルの効率(今回は18%を想定)を掛けて発電量を算出しました。

電力卸売市場(JEPX)の価格

電力卸売市場(JEPX)の価格ですが、JEPXのページからデータのダウンロードが可能です。電力卸売市場の価格は30分毎に決まりますが、NEDOの日射量データは1時間毎なので、整合性を取るために1時間毎のデータに変更します(前半30分と後半30分の平均値をその時刻の電力市場価格しました)。なお、価格は直近3年間の平均値(2018~2020年)を時間帯別に求めました。

設置角度・方位別の発電量・設備稼働率

それでは、設置角度・方位別の発電量をご紹介します。今回は、札幌・東京・福岡の三か所で、設置角度5・15・30・45度+90度(壁面設置)におけるパネル1kWあたりの年間発電量を試算しています。先述の通り、外気温やパワコン効率は加味していません(また、積雪の影響も考慮しておりませんので、札幌の5度設置の発電量はもっと低くなると思います)。結果ですが、札幌・東京・福岡のいずれにおいても、設置角度30度程度が最適でした(なお、実際に設置角度を検討する際は、傾けすぎると隣のパネルとの距離を長くとらないと影が被るので要注意です)。方位は、当たり前ですが南にパネルを向けるのが良いのですが、札幌の場合はやや(5度くらい)東に傾けた方が発電量が増えました(真南とほとんど変わりませんが)。また、壁面設置の場合、概ね最適角度の3割減くらいの発電量になりますが、架台が不要な分工事費を抑えられれば、このような設置方法もアリなのかなと思います。

発電量だけだと分かりにくいので、設備稼働率で計算し直したのが以下の表です。南中高度が比較的低い札幌は、東京・福岡と比較して壁面設置の設備稼働率が高いことがわかります。積雪の影響も受けにくいと思いますので、北海道や東北では壁面設置も良いかも知れません。

設置角度・方位別のFIT収益

FITの収益ですが、固定価格買取なので単純に発電量が多い方が高収益となります(なお、40円/kWhというFIT開始当初の買取価格で計算しています)。よって、先ほどの発電量の結果と同様に設置角度は30度程度で、方位は真南(札幌や5度くらい東に傾けても良い)が最適となります。

設置角度・方位別のFIP収益

次にFIPの結果を示します。FIP価格は制度が確定していませんが、制度の趣旨を考慮し「FIT価格(今回は40円/kWh)ーJEPX市場価格の平均値」をプレミアム固定価格として計算しました(概ね30円/kW程度となります)。今回の計算は、電力卸売市場価格のピークが概ね夕方に発生することから、「パネルを西側に向けた方が、全体の発電量は減るものの、市場価格連動のFIPでは有利になるのでは?」と考え実施したものでした。しかし、結果はほとんどFITと同じで30度・南向きが最適となりました(札幌のみ角度は45度が最適)。やはり、設置角度・方位だけの小手先のテクニックでFIP対応(市場価格連動対応)するのは、なかなか難しいようです。そうなると蓄電池の活用が考えられますが、それは後日計算してみようと思います。

まとめ

今回の記事では、FIT・FIPにおいて収益を最大化させるための太陽光パネルの最適な設置角度・方位について検証しご説明をしました。時間帯によらず売電単価が一定なFITでは、設置角度30度・南向きが収益最大となりますが、電力卸売市場価格連動のFIPではパネルを西側に向けた方が有利になるかと考えて試算しましたが、結局FITと同様の条件が最適という結果になりました。今後は、蓄電池による発電時間シフトの効果についても検証してみたいと思います。

参考リンク・資料

  1. 日射に関するデータベース | NEDO
  2. JEPX

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