②再エネ | 脱炭素の主役、持続可能なエネルギー源

エネルギー
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みなさん、こんにちは。

1つ前の記事では、脱炭素社会を目指すうえで「省エネ」が大事な一歩であるお話を致しました。まずは、無駄に消費しているエネルギーを減らしCO2の排出量を減らすということです。しかしながら、省エネだけでは大幅にCO2排出量を減らすことはできても、ゼロ(脱炭素)を実現することはできません。そこで必要となるのが再エネ(再エネ可能エネルギー)です。

再生可能エネルギーとは?

そもそも、再生可能エネルギーとは何でしょうか?これは、「エネルギー供給構造高度化法」という法律で、「太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの」と定義されています。また、その「政令で定めるもの」とは「太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他の自然界に存する熱・バイオマス」を指します(1)。少しかみ砕いた言い方をすると、自然界に存在するエネルギーのうち、利用する以上の速度で補充されるものを指します(「自然界に存在する」だけだと、石炭・重油・ガスなどの化石燃料も再エネになってしまいます)。そして、再エネの最大の特徴としては、「枯渇の心配がない」「CO2を排出しない(または、排出してもそのエネルギー源が作られる際に同じだけCO2を吸収する)」という事があげられます。

再エネのポテンシャル

それでは、世の中に再生可能エネルギーはどのくらいあるのでしょうか?地球に流れ込むエネルギーの大半は、太陽から来るものです。その量は17.3京Wとまさにケタ違いの量です。その量の約30%は直接反射として宇宙空間に逃げていきますが、残りが「太陽光(熱)、風・波、蒸発・降雨、光合成」などの形で地球にもたらされています(2)。そして、それぞれ「太陽光発電、風力発電、水力発電、バイオマス発電」などの再生可能エネルギー源となります。一方、人類が消費するエネルギーの量は583.9EJ(3)(4)ですが、これを時間換算すると18.5兆Wで太陽光の0.011%となります。つまり、人類は地球に流れ込む太陽光のほんの1万分の1を利用するだけでエネルギーの問題が解決できることになります(話はそう簡単ではありませんが・・・)。実際には、経済的・技術的問題でこれら全てのエネルギーを使うことは難しいですが、エネルギー源はたくさんあることがお分かり頂けたのではないでしょうか。

再エネの実態(導入量)

さて、再生可能エネルギーの源はたくさんあることがわかりましたが、実際に使われている量はどのくらいでしょうか?以下の図が、使用するエネルギーの内訳(4)です(左:世界、右:日本)。水力と再エネ(水力以外)を合わせたものが再生可能エネルギーの割合で、世界が11.4%・日本9.4%です(日本は世界に遅れをとっていますね)。そして、この世界で使われている再生可能エネルギーの量ですが、降り注ぐ太陽のエネルギーの0.001%となります。まだまだ、再生可能エネルギーは十分に使われていない状況であることがわかります。

再エネの課題

それでは、なぜ再エネはあまり普及していないのでしょうか。ここでは、再エネの抱える課題について触れてみたいと思います。

1.価格が高い

再エネの最大の課題は、既存の発電手法と比較して「同じ量を発電する際にかかる費用が高い」ということです。以下に「発電コスト検証ワーキンググループ」で検証した電源別の発電単価を示しますが、水力以外の再エネは原子力・化石燃料と比較して高いことがわかります。このデータは少し古いものですので、当時と比べると再エネの発電単価は下がってきていますし(特に普及の進んだ太陽光)、原子力・化石燃料についても電力卸売市場(6)で取引されている価格(概ね5~7円/kWh程度のことが多いです)と比較すると高く見積もられている気がしますが、相対的に再エネの方が高いことがお分かり頂けるかと思います。なお、最もコストダウンの進んでいる太陽光(大型)については、2020年度のFIT調達価格等算定委員会資料(7)の数値から計算すると概ね9円/kWh程度となり、だいぶ安くなったものの市場価格とと比べるとまだ高い状況です。※なお、各種発電単価は設置条件や規模による異なります。

今後、再エネ設備の普及に伴い機器や工事費用のコストダウンが進むことが期待されており、近い将来には原子力・化石燃料の発電単価を下回るかも知れません(再エネの普及が進む欧州等では、既にそういう事例が出ているようです)。また、化石燃料由来の発電は確かに安価ですが、発電費用の大半を燃料が占めています。日本では、その燃料はほぼ海外から輸入に頼っているのでが実情ですので、国富の海外流出に繋がります。一方で再エネは発電単価はまだ高いものの、工事やメンテナンス等が占める率が高いため国内の雇用維持に繋がります。このような点も考慮して、国策として再エネの導入を補助し発電単価を押し下げることが必要であると言えます(現在行われているFITなどが、まさにその方策の1つであると言えます)。

2.発電量

再エネの2つ目の課題は発電量です。端的に言うと、同じ発電能力の発電所を建設した場合、太陽光や風力のようなメジャーな再エネは、原子力や火力発電所に比べて発電量が少ないという事です。以下に電源別の設備利用率(5)を示します。設備利用率(設備稼働率)とは、発電所がどれだけ有効利用できるかを示す数値です(発電所が、365日24時間・最大能力で発電する場合100%、365日24時間・半分の能力で発電する場合50%、365日12時間・最大能力で発電する場合50%となります)。なぜ太陽光や風力の数値が低いかと言うと、お天気任せでしか発電できないからです。特に太陽光は日中しか発電できないため設備利用率が低く、原子力や火力発電所と同じ量を発電しようと思うと5~6倍程度の容量(発電能力)の発電所を建てなければいけません。

では、設備利用率が低いと何が問題なのでしょうか?先ず、同じ能力の発電所を建設しても発電量が少ないので発電単価が高くなりますが、これは先ほど述べた通りです。それ以外に、系統枠(送電線)の問題があります。発電所でつくられた電気は送電線を使って我々のもとに届くのですが、この送電線はいくらでも電気を流せるものではなく容量が決まっています。例えば、太陽光発電で火力発電所を代替する場合5~6倍の発電能力が必要なため、送電線の能力も5~6倍用意することになっています。このことから、九州・東北・北海道等の一部の地域では送電線の容量が不足してきており、再エネの発電所を建設したくても出来ない状況が出てきています。この問題を解決するために、送電線の有効利用に向けた検討・取り組みが進められています。

3.調整ができない

3つ目ですが、太陽光や風力のようなメジャーな再エネは発電量が調整できないという点が課題です。実は電気の供給というのは大変シビアで、基本的に需要(電力使用量)と供給(発電量)をピッタリ合わせなくてはなりません。

供給が需要に対して少なくてもダメですし、逆に多くてもダメです。このバランスが崩れると、北海道胆振東部震災のような大停電(ブラックアウト)が発生する可能性があります。現在、このシビアな調整は主に電力送配電事業者と呼ばれる旧大手電力会社から分社した会社が担務しています。再エネ導入量が少ないこれまでは、電力送配電事業者は電力需要を予測し、それに合わせて火力発電所(や揚水発電所)の出力を調整することでこのバランスを取ってきました。しかし、今後太陽光や風力のような再エネ(これを変動性再エネ:VREと言います)が増加した場合、需要のみならず変動性再エネの予測も行わなくては需要と供給のバランスが取れなくなります(そして、変動性再エネの予測は非常に難しいと言われています)。このことから、再エネの普及拡大には「調整力の確保」が必須であると言われており、これがまさに「調エネ」にあたります。その詳細については、次の記事に記載したいと思います。

まとめ

さて、ここまでご紹介した通り、再エネは主に太陽光に由来する莫大なエネルギーが源であり、その1万分の1を活用するだけで人類が使うエネルギーをほぼ賄えます。また、資源に限りがある化石燃料や原子力と異なり永続的に利用できるというのも特徴です。しかし、「コストの問題」「発電量の少なさに起因する送電線容量不足の問題」「調整力の問題」によりまだまだ普及は十分ではなく、全世界の11.4%(日本は9.4%)を占めるのみです。今後は、再エネのコストダウンや調整力技術の発達などによる再エネの更なる普及拡大が期待されています。

参考リンク・資料

  1. 総論|再エネとは|なっとく!再生可能エネルギー (meti.go.jp)
  2. 2014年刊行分|国立国会図書館―National Diet Library (ndl.go.jp)※第2部第1章「再生可能エネルギーに関する基礎知識」
  3. 平成29年度 エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2018)PDF版 │ 資源エネルギー庁 (meti.go.jp)※第2部第2章「国際エネルギー動向」
  4. bp Statistical Review of World Energy 2020※p.8 Primary energy
  5. 総合資源エネルギー調査会|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)※「長期エネルギー需給見通し小委員会に対する発電コスト等の検証に関する報告」p.12
  6. JEPX
  7. 055_01_02.pdf (meti.go.jp)※p.3 令和2年度(2020年度)の調達価格及び調達期間についての委員長案
  8. 1.2 日本と世界の自然エネルギー | 自然エネルギー白書 (isep.or.jp)

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